2022年8月25日、NTT西日本のフレッツ回線に広範囲で通信障害が発生し、211万回線の利用者においてインターネット通信がし辛い状況になりました。参考URL
この障害においては総務省も立ち入り調査を実施するほどの事態となり、インターネット回線が多くの人や企業における重要なインフラになっていることの裏付けとも言えると思います。
そんな重要なインフラであるインターネット回線が実際に障害で通信できなくなったときにどう対処すればよいか把握している人は少ないのではないでしょうか。
通信障害が起きたとき、どこが原因でどう対処すればよいかを判断出来れば、影響を最小限に抑えることが可能になります。今回は企業の事務所や家庭における主なインターネット回線の種類と、回線障害の検知方法、障害時にどのような対策が効果的かをご紹介します。
結論
インターネット回線の障害に対応するには、回線の冗長化(2本以上のインターネット回線を用意)をすることです。どちらか片方の回線が障害で通信できなくなっても、もう片方の回線を使ってインターネット通信を継続することができるからです。
インターネット回線を冗長構成にする場合の注意点
インターネット回線を2本と言っても、同じ種類の回線、例えばフレッツ回線を2本用意しても先述のようなフレッツ網全体の障害には対応できません。
それぞれ違う種類のインターネット回線を用意することが重要です。
では、違う種類の回線とはどういった回線なのかを解説します。
インターネット回線の種類
インターネット回線は、大きく分けて下記の5種類になります。(専用線は除く)
これらの回線を組み合わせて冗長化を図ります。
- フレッツ光
NTT西日本、東日本が提供している光ファイバー回線の総称です。フレッツは足回り(物理的な光回線)のみNTT東西が提供し、実際のインターネットへのアクセスはISPと呼ばれるプロバイダやVNEと呼ばれるインターネット接続事業者が担うことになっています。
光コラボと呼ばれるサービスもフレッツ回線を利用しています。 - 電力系回線
各地域の電力系事業者(関西電力系のeo光、四国電力系のピカラ等)が提供するインターネット回線です。地域によって提供されている場合とそうでない場合がありますが、基本的にはプロバイダも兼ねているため回線を契約すればインターネットが利用できます。 - ケーブルTV系回線
各地域のケーブルTV系事業者(JCOM等)が提供するインターネット回線です。
ケーブルTVでのインターネット回線は、フレッツ回線や電力系回線が提供されていないような場所でも地元のケーブルTV事業者が提供している、という場合が多いです。
こちらもプロバイダを兼ねているため、回線の契約でインターネットが利用できます。 - 独自系回線
アルテリア・ネットワークス(UCOM)など、上記のどれにも属さずに独自で回線を提供している事業者です。
独自で回線を敷設しているため他の回線よりも提供エリアが狭いですが、大元のインフラが別のためフレッツ回線等の障害に引きずられることがありません。
※アルテリアは地域によってはダークファイバーを利用するため完全に独自回線のみというわけではありません。 - モバイル回線
ドコモやAU、ソフトバンク等のモバイル回線事業者です。
現在は主に4Gや5Gのモバイル通信が利用されています。一般に物理回線よりも通信が不安定でRTT(応答時間)も遅いため、品質が一定ではないことが多いです。
冗長構成のパターン
冗長方式
冗長構成における回線の利用方式は、大きく2パターンあります。
- Active – Active方式
2本の回線を同時に利用する方式です。どのようなアルゴリズムで2本の回線を利用するかは、回線を収容するルータの機能や冗長構成の方式によって様々です。 - Active – Standby方式
通常時はどちらか1方の回線をメインの回線として利用し、もう1方のバックアップ回線はメイン回線の障害時のみ利用する方式です。
どちらのパターンを選択するかですが、弊社としてはActive – Standby 方式をおすすめしております。理由としては、通信トラブル発生時にどちらの回線でトラブルが発生しているか切り分けが難しくなるからです。
あくまで2本目の回線はメイン回線の障害時における回避策として割り切ったほうが良いと考えます。
回線の組み合わせ
- 有線インターネット2本
メイン:フレッツ回線、バックアップ:電力系回線 などの有線による異キャリア回線を準備するパターンです。どちらも高速な通信速度を確保できる反面、回線コストがおよそ2倍となり、異なるキャリアの回線を引き込むことができる場所かどうかにも左右されます。 - 有線インターネットとモバイル回線
メインにフレッツや電力系回線を1本引き込み、バックアップにはモバイル回線を利用するパターンです。バックアップがモバイル回線のため通信速度や品質はメイン回線より劣るため普段の業務にストレスを感じることがあるかもしれませんが、安価かつ簡単に構築できることがメリットとなります。
下図:構成イメージ
コストの許容と回線敷設条件さえそろえば1.の有線インターネット2本が望ましいですが、インターネット回線を収容するルーターの機種も上位機種を選定したり、または2台用意する必要があるなどハードルが高いため、2.のモバイル回線を利用するパターンがおすすめです。
回線障害時の検知・確認方法
では実際にインターネット通信が遅くなったり、完全に切断されてしまった場合にはどうすればよいでしょうか。チェックすべきポイントを記載します。
1.障害情報サイトの確認
まずはインターネット回線の事業者が提供している障害情報サイトを確認しましょう。
下記のサイトでご自身が利用されているエリアや回線種別を入力し、検索します。
※2022年10月現在の情報です。URLは今後変更される可能性があります。
- フレッツ光
NTT西日本
NTT東日本 - 電力系回線
eo光
コミュファ光
メガエッグ
ピカラ光
BBIQ - ケーブルTV系回線
数が多いので省略。
「”サービス名” 障害情報」等で検索すると発見できることが多いです。 - 独自回線系
アルテリア
2.回線終端装置(ONU、HGW等)の状態確認
次によくあるのは、機器の電源抜けやケーブルの破損など、物理的な要因による通信障害です。
基本的にインターネット回線には回線終端装置という光ケーブルや同軸ケーブルをLANケーブルに変換する装置がどこかにあります。その機器の電源が落ちていたり、接続されている光ケーブルやLANケーブルが断線しているパターンです。
参考として、代表的な回線終端装置を含むネットワークの構成例を示します。
下図にあるようにONUやホームゲートウェイ、ルータの電源が落ちている、ルータとパソコンの間のLANケーブルが断線しているなどが考えられますので、まずは機器に電源が入っているかどうかの確認が重要です。機器LEDランプとマニュアルを確認し、正常な状態であるかどうか確認するのも良いでしょう。
3.プロバイダ契約の状態確認
ここで言うプロバイダとは、フレッツ回線利用時にインターネット接続する場合に必要となる契約を指します。プロバイダによって大きく通信速度や障害率が変わったりするというのはあまり聞いたことがないですが、あるお客様で料金の払い忘れによってプロバイダ契約停止されインターネットが止まったという例もあるので意識しておく必要があります。
まとめ
インターネットは今やあらゆる企業の業務に欠かせないインフラとなっており、回線障害によるインターネット接続断はそのまま機会損失に直結することになりえます。
安心して業務継続するため、インターネット回線は冗長化することをおすすめしております。
冗長構成はActive – Standby(バックアップ回線は普段利用しない)、かつモバイル回線をバックアップとして利用することで比較的低コストかつ回線工事無しで利用することが可能です。
ぜひこの機会にインターネット回線について見直してみてはいかがでしょうか。