Web会議。コロナ禍によってどこからでも会議ができるツールとしてどんな業界でもほぼ一般的に定着してきていると感じています。
ZoomをはじめTeamsやWebEX等、様々なサービスがあり一度は使ったことがある人も多いのではないでしょうか?
しかし、その一方で映像や音声の品質に不満を抱きながら使っている人が多いことも事実です。
この記事では、Web会議の品質が悪く困っている場合に、通信ネットワークの見直しによりどのような対策ができるかを説明します。
今回はオフィス内で利用している前提で進めていきます。自宅や出先等での対策は別の記事にて解説予定です。
通信品質が悪い場合に起こる現象
通信品質が悪い場合、下記のような現象が起こる可能性があります。
1.音声が途切れる
通信データのパケットロスが発生し、ブツブツと相手や自分の音声が途切れて聞こえる現象です。相手の声が聞こえにくいと、言葉を聞き取ることに集中してしまい、大きなストレスになります。また音声が欠落し、もう一度聞き直したりと会議の効率が低下します。
2.音声が遅れたり早く聞こえる
これはジッターと呼ばれるデータパケットの揺らぎによって、音声が遅れたり乱れたりする現象です。こちらも会話が成り立ちにくくなるためストレスフルな会議になるでしょう。
3.映像が途切れる
Web会議ではお互いの顔を写したり資料の共有をすることがよくあります。その際に映像が止まってしまったり、画質が荒くなってしまうような現象です。この現象も1.の音声途切れと同じくパケットロスによる可能性が高いです。
対策のポイント
一般的なオフィスネットワークを例に、代表的なチェックポイントを記載します。
【ネットワーク概要図】
1.インターネット回線における輻輳の有無
輻輳とは、特定の回線に通信が集中して混雑してしまうという通信ネットワーク界隈でよく使われる用語です。例えば100Mbpsのインターネット回線に対して100Mbps以上の通信が発生しているような状態です。
また、一般家庭や小規模の法人で利用されているインターネット回線はほとんどがベストエフォートと呼ばれ、明記しているスピードが出ることを保証しない回線であることがほとんどです。
1本の回線を複数のユーザーで共有することでコストを下げつつ高速な回線を利用することができるため、中小企業や個人宅にはベストエフォート回線が現実的な選択肢となるでしょう。
(一説によると1Gbps回線を32の契約者で共用しているとも言われています)
ただしその場合、実際に1Gbpsのスピードが出ることはほとんどありません。
また、時間帯によって遅延や途切れが発生する可能性があります。
2.ルータの性能が低い
インターネット回線がベストエフォート1Gbpsだったとしても、ルータの性能が100Mbpsまでしか対応していないものを利用していると、当然100Mbps以上のスピードが出ることはありません。
また、ルータではなくアンチウイルス等のセキュリティ機能がついたUTM(統合脅威管理製品)の場合は、様々なセキュリティチェックを実施しているために実際の性能よりも低いスピードしか出ない場合もあります。
3.Wi-Fiの品質が悪い
Wi-Fiで通信する場合は、利用環境によって無線品質が大きく劣化することがあるためWi-Fiの無線通信品質チェックも重要なポイントになります。
昨今ではモバイル機器(スマホ等)だけでなく、パソコンでもWi-Fiを利用することが増えてきました。
これまでのインターネット通信ではリアルタイムな通信を求められることは少なかったので、通信品質が多少悪くても気にならなかったかもしれません。しかしWeb会議の快適さは通信品質に大きく左右されます。
4.パソコンやスマホの性能が低い
Web会議は、思っているよりもCPUやメモリを多く利用します。利用するデバイスによって異なりますが、目安としては5年以上古いパソコンやスマホは買い替えを検討しても良いかもしれません。
5.イヤホン、ヘッドセットの品質が悪い
最後に、意外と見落とされがちなのがイヤホンやヘッドセットによるものです。
特にBluetoothによるヘッドセットの場合はマイクの品質が製品によってかなり違うので、できるだけヘッドセット専用として作られているものを購入するようにしましょう。
具体的な対策方法
対策のポイントが判明したところで、具体的にどうすれば改善できるのかを説明します。
1.フレッツ回線の接続方式変更またはインターネット回線の変更
インターネット回線周りの見直しで大きく効果が出る可能性があるのは、NTTの「フレッツ光」を利用していてかつPPPoE(IPv4)方式で利用している場合です。
PPPoEとは、Point to Point Protocol over Ethernetの略で、主にフレッツ回線からインターネットに接続するためのプロバイダ契約として一般的だった方式です。
最近ではIPoE方式という方式が主流になりつつあり、プロバイダ契約をIPoEに変更することにより大きな速度改善が見込めます。
懸念事項としては、利用しているルータやひかり電話ゲートウェイがIPoE方式対応していることや、プロバイダによってIPoEの方式(MAP-EやDS-Lite)が違ってくるなど、技術的な側面もあるのでわからない場合はITベンダーに依頼するのも手です。
フレッツを利用しているがPPPoEを利用しているか分からない・・・という場合は、ルータやひかり電話ゲートウェイ(HGW)等の設定、プロバイダの契約を見てみるとわかることがほとんどです。
2.ルータの更新
もし今利用しているルータが無線LANルータであったり、何年も前に導入したまま放置されている場合は、新しいルータに更新することで改善する可能性もあります。
無線アクセスポイントと一体型のルータの場合、家庭で数人で使う分には便利で良いですが、企業などで利用する場合は利用人数やデバイスの接続台数も多くなり、速度低下を招くことも考えられます。
また、通信不具合時でも原因の切り分けがしやすいように配慮されており、後々の運用保守にも役立ちます。IPoE対応の製品を選定するのも良いでしょう。
3.Wi-Fiアクセスポイントの更新
Wi-Fiアクセスポイントの更新目安としては、大まかに分けると下記の2点を確認すると良いでしょう。
・機器が対応している無線規格
Wi-Fiは規格によって通信スピードが変わります。基本的には2022年4月現在で一番新しい規格(Wi-Fi 6以降)に対応した機器をオススメします。
厳密には規格の種類だけではなく、MIMOの仕様やアンテナ数なども確認する必要がありますが、そのあたりの解説は技術的な要素が多くなるので割愛します。
・法人向けの機器かどうか
もし今利用しているアクセスポイントが個人向けの場合は、法人向けの機器に更新することで通信品質が安定する可能性があります。
理由としては、法人向け機器は家庭用に比べ同時接続台数が多く、細かいチューニングが可能、不具合時の調査がしやすい等、業務利用に適した機能が多いです。
また、費用についても最近のメーカーでは高性能、低価格なモノもありますので、数台の機器導入に数十万円かかるようなこともありません。
弊社ではUnifi社やNetgear社のAPを取り扱っていますが、どちらも1台2~3万円程度と家庭用の高性能機器とそれほど金額は変わりません。
4.パソコン・スマホの更新
動作が遅いパソコンやスマホはすぐに買い替えることをオススメします。
Web会議だけではなく、通常の業務の快適性や速さにも関わることなので、お金をケチらないほうが良いです。
2022年4月現在だと、パソコンであればメモリは最低8GB、CPUはCore i 5、SSD搭載が最低スペックと考えていいと思います。
スマホはiPhoneであればSE2以降、もしくは11以降を目安にすると良いでしょう。
5.ヘッドセット、スピーカーの更新
ヘッドセットであれば使い勝手から言うとBluetoothが便利です。オススメのメーカーは「Jabra」、「Plantronics」あたりになります。弊社ではJabraの”TALK 45”を利用していますが、かなり快適です。
ただしBluetoothだと繋がりにくい場合もありますので、スマホはあまり使わずパソコンでの利用が多い場合は線のイヤホンマイクを利用するのもアリだと思います。
一箇所に複数人集まっての会議では、Web会議用マイク&スピーカーを用意することをオススメします。そのような場合はマイクの集音性能がより重要となるためです。
オススメのメーカーは「Jabra」もしくは「YAMAHA」です。
まとめ
弊社の経験としては、Web会議の品質劣化の原因としてもっとも多いのは「1.インターネット回線」と「3.Wi-Fiアクセスポイント」になります。
どちらも不具合の原因を探るには技術的なハードルが高い場合もあると思います。
明らかに古い機器を利用している場合は最新の機種に買い替えてみることも1つの手段ですが、原因調査に手間をかけたくない、または調査から対策まで全てやってほしいといった要望がございましたらぜひ弊社にお声掛けください。
適切な調査と対策をご提案いたします。